スト魔女をください

主にSSを。メタルサーガん時もSSが少ねえ少ねえ喚いていた俺ですが、比べていた対象が葉鍵全盛時代のリーフものだということを思い出して少ないことに納得した。アレと比べたら大概のものは少ないわ。

ということでないなら作れの精神で何年かぶりにSSった。某所の突発SS祭りに便乗して2時間ででっちあげた。でっち上げなので無題。カールスラントの2人組は実にいい。この二人はもっとラヴラヴさせるべき。


その笑顔を見るのは嫌いではなかった。いや、どちらかといえばずっと眺めていてもいい。
クリスと二人並べて微笑んでいてくれるなら、私は宇宙(そら)も飛べるはず。
そう思わせるだけの笑顔が、エーリカにはあった。
世が平和ならそれでいいのだが、生憎世は戦火の真っ只中。そんな甘えが許されるはずもない。
ましてや、一カールスラント軍人たる、このゲルトルート・バルクホルンが、だ。
そう、カールスラント軍人とはそういうものなのだ。なのに、こいつは。


「ええい、くっつくなハルトマン!」
「えー。訓練終わったんだからいいでしょー」
私の左腕はハルトマン国に占領されていた。放っておいたらこいつと一緒にぐうたら生活を強要され、
二度と左腕として機能しなくなってしまうに違いない。
私は電撃作戦を持って左腕の占有権を取り返した。
「ちぇ。トゥルーデのいけずー」
最近のエーリカはこんな調子だ。妙に私にちょっかいを出す。妙に私につきまとう。妙に私に触れたがる。
つまり、妙だ。
私がなにかエーリカにしたのかと思ったが、それらしいことをした覚えはない。
何かあるとすれば、私が油断からネウロイに攻撃をもらい、宮藤に治療を受け、ミーナに叩かれたあの日だろう。
あれからエーリカは、事あるごとに私の傍にいようとする。
エーリカになにかあったのだろうか? いい機会だ、白状させてやる。
「ハルトマン、お前時間はあるか?」
「もちろんあるよ! 私の時間は、寝る時以外全部トゥルーデのために取っていてあるからねー」
「……少しはそれを訓練と掃除の時間にまわせ」
「トゥルーデが一緒にしてくれるなら頑張るかもね」
頭が痛くなってきた。こいつは何を考えている?
「まあいい。それならちょっと私の部屋に来い。少し話したいことがある」
「え、いいの!? 結構大胆だねートゥルーデったら!」
「なんの話だ?」
「二人っきりで話したいことがあるんでしょ?」
「……?」
何かが噛み合ってない気がするが、まあいい。とにかく話を聞こうと、私は妙に嬉しそうなエーリカを部屋に導いた。


「トゥルーデ、もう少し落ち着く部屋にしたら?」
「お前の基準で私の部屋をどうこう言われたくない」
たしかに殺風景かもしれないが、散らかし放題の部屋に住むのとでは天地の差だ。
エーリカに椅子を勧め、私はベッドに腰掛ける。
「さて、なんで部屋に呼ばれたかはわかっているなハルトマン」
「いやートゥルーデにこんな甲斐性があったなんて驚きだよ。絶対私の方から言うことになるって思ってたしさー」
「ん? そうか、ハルトマンも言おうとは思っていたのか」
「だってずっとこのままなんて嫌だよ。いつだって結果が私の全てなんだし」
「お前が言うと実に説得力があるな」
階級無視、命令違反、上層部批判、とおよそ軍人らしさの欠片も見当たらない行動ばかりするエーリカが
なぜ今も軍に所属していられるか。偏に戦闘面での功績の大きさ、つまり結果を出しているからだ。
撃墜数1位の私に迫る勢いでスコアを伸ばしつつあるこいつは、必ず近いうちに私を追い抜き、
世界一のエースへと上り詰めるだろう。
しかも撃墜数だけではない。こいつは僚機の損失ゼロという驚異的な『おまけ』付きだ。
黒い悪魔なんて嫌味の入った呼び方もされているが、こいつの底に眠る優しさを知らずにそんな呼び方をされるのは忍びない。
が、本人がまるで気にしていない以上、私がしゃしゃり出るのはお門違いだろう。


「まあいい。ならばさっそく聞かせてもらおうか」
「えー、結局わたしに言わせるのー?」
「どっちでも一緒だろういいから早く言え」
「ムードもへったくれもないなあ」
ムードが関係あるか馬鹿者。
「えーとそれじゃ、好きだよ、トゥルーデ」
そう、それが聞きたかったんだ。そうか、好きだったからこいつは執拗にわたしの周りをつきまとっていたのか。
うむ。……


なんだって?


「ハルトマン、お前、今、なんて、言った?」
「聞こえないふりしてまた恥ずかしいこと言わせようだなんて、トゥルーデ意外とさかしい事するね」
「違う! そうじゃなくてだな」
「えーとそれじゃ、好きだよ、トゥルーデ」


せめて、その顔があのいたずら小僧みたいな悪魔の表情を浮かべていてくれれば、まだ対処の仕様があったのに。
今のこいつときたら、世界の名だたる画家100人がこの笑顔を描いて名前を付けたら
100人全員「白い天使」と名付けるであろう強烈な笑顔で、そんな事を私に告白してきた。
どうしよう。ドキドキする。
「どうしたのトゥルーデ?」近づくな。
「顔赤いよ?」お前よりましだ。
「なにか言ってよ」なんてこと言ってくれたんだ!


エーリカから逃げようとして、すぐにベッドの端に追い詰められた。なんということだ、こんな初歩的なミスを……!
というか、なんなんだこの状況は。私はハルトマンを問い詰めるためにこの部屋に呼んだのであって、
決して追い詰められるためでは……!
「トゥルーデはさ」
軍人としての経験が叫ぶ。今から放たれる致命的な一撃をなんとしても回避せよ、と。
しかし今のわたしに逃げ道はない。背中に当たる頑丈な壁が、今はただ恨めしい。
そしてエーリカの口は開かれ
「……私のこと、きらい?」
矢は放たれた。矢は私の心を真正面から貫き、柏葉剣付騎士鉄十字勲章を打ち砕き、天空へと消えていった。


「嫌いなわけあるか! 私は! お前の笑顔がなにより大好きだし、ずっと見ていたいと思うし、できれば守りたい!
 普段はズボラでダメ人間でも、仲間のことをちゃんと見て、守っているお前の優しさを私は知っている!
 お前のことを悪く言うやつがいたら、誰だって私がぶん殴ってでも黙らせてやる!
 だから、お前は笑っていてくれ! そんなエーリカが私は……!」


つぎのしゅんかん、えーりかのかおがすごいちかくにいて、なんかしゃべれなくなって、よくわからなくなった。