超回復

腕が痛い。ミシミシと痛い。ミシミシといってもミとシの音が聞こえてくるわけではない。歪むとか軋むとかの表現だ。俗に筋肉痛と呼ばれているこの状態を迎えると、筋肉は以前より太い状態へと変貌を遂げつつ回復する。これが超回復である。

腕だけでなく腹や脚も超回復中であるので、わりかし全身が痛い。なにゆえこのような状況になってしまったのだろうかと考えてみた。頭の中のコンピュータは、2秒後に昨日筋トレしたからだ、との回答をすぐさまたたき出した。うん、優秀。


しっかし、お世辞にも自分の体型を見て筋トレしてます! なんて言えるような体型じゃない。ガリガリだからだ。一時期は身長170で体重50切ってました。田舎に帰るたび「ご飯ちゃんと食べてるのか?」と心配されたもんです。虐待なんか受けてないってば。

言ってみれば雑誌の筋トレ器具紹介記事における、before側代表的肉体なわけです。それでも特に不自由なく生活してたんですが、以前の仕事場の後輩に干物のようなこの体を心配されまして、筋トレせよとのご命令を賜りました。ちなみにその後輩は、一見私と同じくらいのガリガリ君にもかかわらず、力を込めると即ブルース・リーといった感じの隠れマッチョでした。んで顔がなにゆえジャニーズに行かなかったのかといったあんばいの美形さんでした。なぜか彼女はいませんでしたが。頭も私なんぞよりは全くよかったです。天は二物を与えずってのは絶対嘘っぱちですね。なぜか彼女はいませんでしたが。

そんななぜか彼女のいない美形後輩は、よく勤務時間中に筋トレを始めた私の肉体をあれこれ触って、太くなりましたねーとか胸大きくなりましたねーとか褒めてくれたものでした。人間褒められると嬉しくなるもんで、その後半年くらい筋トレを続けてました。最終的には努力次第で腹筋が割れるくらいのところまでは到達したもんです。なぜか彼女のいない美形後輩は我が事のように喜んでくれてました。

今でも思い出したように筋トレをします。もう腹筋は割れてませんが、限界まで腹筋運動をしたあと、息を切らしながらなぜか彼女のいない美形後輩のことをふと思い出し、わたしはそっと呟くのです。


俺、無事でよかったなあ、と。