そうだ。思い出そう。

「昔好んで愛飲していたジュースがあったのさ」
メッコール?」
「いやそれも好きだけど」
「滅多に売ってないよね」
「昔はケース単位で頼んでたのにね」
麦コーラって呼ばれてたね」
「まあメッコールはどうでもいいんだ。名前を知ってれば情報も集めやすいし」
「名前の分からないジュースがあると」
「そうなんだよマイケル」
「誰がマイケルか」
「確か小学校通ってた時くらいに売られてたと思うんだ」
「10年以上、20年前以内くらいか。曖昧すぎ」
「覚えてないんだからしょうがない」
「で、どんな味だったの?」
「おいしかった」
「じゃ、僕アラビックヤマトノリの接着面付近にこびり付いた固形化したノリをはがすバイトがあるから」
「僕が悪かった。確かグレープフルーツ味だったと思う」
「苦そうだね」
「いやジュースだから。でも甘すぎなくて、わりかしすっきりした味だったと思うんだ」
「パッケージの色は?」
「多分青っぽい感じ」
「それ、ガムのスウィーティーじゃない?」
「さすがにガムとジュースを間違えるほど海馬が死滅してる可能性は否定したい」
「それが思い出せなくてイライラしてると」
「重大な喪失だよ」
「ただでさえ頭の回転鈍いんだから記憶力くらいしっかりしたいよね」
「あ、思い出した」
「思いのほか早かったね。で、なんだったの?」
「トースターのコンセントが抜けているじゃないか」
「古っ」