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というわけで資料。もう一個あったはずだけどどこやったか思い出せん。では以下の文章を張り切って音読してみましょう! そのさい、何度つっかえたか数ると良し。

下人は、大きなくさめをして、それから、大儀そうに立ち上がった。夕冷えのする京都は、もう火桶*1が欲しいほどの寒さである。風は門の柱と柱との間を、夕闇とともに遠慮なく、吹き抜ける。丹塗りの柱にとまっていた蟋蟀*2も、もうどこかへ行ってしまった。
下人は、首を縮めながら、山吹*3の汗衫*4に重ねた、紺の襖の肩を高くして、門の周りを見回した。雨風の憂えのない、人目にかかる恐れのない、一晩楽に寝られそうな所があれば、そこでともかくも、夜を明かそうと思ったからである。すると、幸い門の上の楼へ上がる、幅の広い、これも丹を塗ったはしごが目についた。上なら、人がいたにしても、どうせ死人ばかりである。下人はそこで、腰にさげた聖柄*5の太刀が鞘走*6らないように気をつけながら、藁草履*7をはいた足を、そのはしごの一番下の段へ踏みかけた。

有名な芥川龍之介羅生門の一節である。読み仮名ありの部分は差っ引くとして、さてどれくらいつっかえただろうか。なお、この場合のつっかえたとは、多少の読み違えや読み飛ばしで同じ部分を二度読むことではなく、読み方がわからずにそこから先に進めなくなる状態を指す。


大概は丹塗り(にぬり)や紺の襖(こんのあお)辺りがわからず、だいたい0〜3回くらいで収まるんじゃないかと思う。さて我がクラスのとある生徒はどうだっただろうか。


大儀、夕冷え、遠慮、丹塗り、紺の襖、憂え、楼、丹を塗った*8、太刀
以上9回でした。


一部わからんでもいい読みがあるのはともかく、夕冷えあたりが読めないのは流石にやばいんじゃないかと他人事ながらに思った。なんというか、日本語による文字情報って全国共通のものだと思ってたけど多分読まないじゃなくて読めない人ってのがこんなに身近にいるものとは思わなんだ。そりゃ映像と音声による情報伝達が主流になるよなあ。


まあ裏を返せば、彼らにこの日記は非常に見つかりづらいであろうという可能性が大きいことがわかったのが一番の収穫。

*1:読み仮名あり

*2:読み仮名あり

*3:読み仮名あり

*4:読み仮名あり

*5:振り仮名あり

*6:読み仮名あり

*7:読み仮名あり

*8:2回目